ルツ記

ルツ記
士師記の重い雰囲気とは一転して、牧歌的な温かみのある書物です。いつ頃、誰によって書かれたのかははっきりとはわかりません、その時代的背景は士師記の時代と重なります(1:1)。主人公のルツは異邦人で、アブラハムの甥ロトの子孫モアブ人でした。彼女は義理の母ナオミが信じるイスラエルの神である主を自分の神とし従い通しました。また彼女は神だけでなく、姑に対しても忠実な女性でした。しかしこの書物は単に一人の女性とまたその周辺の人々の誠実な物語にとどまるものではなく、ルツは遊女ラハブの系図にあったボアズ(マタイ1:5)という人物との結婚に導かれ、そしてその子孫にダビデ王が生まれ、さらにはその系図から救い主イエス・キリストが誕生するという神様の深いご計画の一端が紹介されます。私たちはこの書物から神様の深遠なご計画に目をとめつつ、私たちの日々の歩みを誠実に、忠実に神と人との前に歩んでいくことを覚えたいと思います。

ルツ記 1章
士師の時代に飢饉が起こり、ベツレヘムに住むある人が、ヨルダン川東のモアブ人の地に妻と二人の息子を連れて寄留しました(1)。ところがその地で、その夫は死に、さらには二人の息子もモアブ人の妻をめとりますが、二人とも死んでしまいました(2-5)。母ナオミは故郷ユダに帰る事を決意します。彼女は未亡人となった息子の妻たちを気遣い、自分たちの家に帰り、新しい夫を持つように語ります(6-14)。義母の説得に弟嫁はナオミの元を去ります。しかしルツは義母ナオミにすがって、あなたとともに行くこと、私もあなたの民であり、あなたの神が私の神ですと告白をしました(15-18)。ナオミは自らの境遇を嘆きつつ、主は私を素手でここに帰されたと故郷の人々に言いました。しかしそこにはルツが一緒でした(19-22)。私たちは自分の境遇を嘆くことがあります。しかしよく見るとそこになおも神様の憐れみが残されていることに気がつくことがあります。

ルツ記 2章
ルツは生活のためにも姑に相談をして落穂ひろいに出かけることにします。律法によれば、貧しい者や在留異国人は刈り入れの際に落ちた穂を拾うことができました(レビ記19章)。ルツの向かった先は、はからずも、ナオミの夫の親戚筋にあたるボアズの畑でした。またそこにちょうどボアズも町からやってきていました(1-7)。ボアズは、ルツの境遇をおもんぱかって、飲み水や食事などの世話をし、彼女にとても親切にしてあげました。ルツももらった炒り麦の中から一部は姑の分として取り分けておきました。またボアズはわざと穂を落とすようにもしもべたちに命じました(8-16)。ルツは夕方までに十分すぎるほどの大麦を得、ナオミにそのことを報告しました。ナオミは、そこに主の導きを信じ、ルツを励ましました(17-23)。ボアズを通して主は御翼の下に身を避けるルツを守り、助けられました。見えない主の御手は、人々の愛のわざを通しても働かれます。

ルツ記 3章
一生懸命に仕える嫁のルツのために姑のナオミは結婚相手を探すことにしました。ナオミは、ルツを親切に扱うボアズが、年配者でもあったようですが、買い戻しの権利を持つ親類であることを知っていて(レビ25章)、彼女にどう振舞うべきかを告げ、ルツもその姑の助言に従いました(1-5)。収穫の祝宴の時を見計らい、ボアズの足元に隠れ、夜中に目を覚ましたボアズにルツは求婚しました。そのことを聞き、ボアズはナオミの意図も含めて理解し、まずは正当な手続きを踏んで、事を進めることを約束しました(6-13)。ボアズはいらぬ誤解を避けるために、朝早く起きて、まずはルツを家に帰し、そして、自分はなすべきことを進める準備をしました。その報告を受けて、姑のナオミは、主がどのようにこのことを導くか待ちました(14-18)。それぞれに自分の計画や思いがあったことでしょう。しかし、そこに主の御心がなされることを信じて、従った人々の姿を覚えます。

ルツ記 4章
ボアズは、裁判などが行われる城壁の門のところに座って、ナオミの夫エリメレクの買い戻しの権利のある第一の親類を呼び止め、長老たちを証人に立て、土地及び彼に属する妻を含めて買い戻しの権利を行使するかを尋ねます。するとその人は、土地の買い戻しは願いましたが、モアブ人のルツをめとり、その子孫にその地を継がせることは損だと考え、その申し出を辞退しました(1-6)。そこでボアズがその権利を引き継ぐことを願い出て、昔の習慣に倣って公にそのことを示しました(7-10)。人々は十二部族の最初の二人の女性とユダの妻となった息子の妻タマルの名をあげて、祝福の言葉を与えました(11-12)。ボアズとルツにはオベデが誕生し、さらにオベデにダビデの父であるエッサイが誕生しました(13-17)。まさにユダ族の系図にダビデ王が生まれ、そして救い主の系図(マタイ1章)に向かっていきます(18―22)。神様の揺らぐことも、変わることもない計画を覚えます。